5章 追跡
5一1*目覚め
2010年 時間警備保障株式会社
左手に老人の腕を抱え、右手に壁があたるのを感じながら、わめき声のなか夢中でデニ
一ズを出た。
その後をなぜかドラマンは覚えていなかった。
狙撃された跡が、ズキズキと痛んだ―それは今も変わらない。
『お目覚めのようね。』
気がつくと、ドラマンは、会社のベッドに横になっていた。秘書が彼を見下ろしてる。
『老人は?うう…』
『あの後、二人のナンバー・ホームズは合流し、G7のいる部屋で老人を看病してるわ。
』秘書が答えた。
『サイコ・クラッシャーはてごわい。それでも老人が心配だ。』
『あなたは一つてがらをたてたの。あなたを狙撃した銃は20世紀のものではないわ。
今、弾丸を鑑識にかけてその銃がどの時代のものか調べてるわ。』
『わかりしだい、あなたをその時代へタイムワープさせるからそのつもりでね。』
秘書は部屋を出ていった。ドラマンはまた眠りにおちた。
5―2*襲撃
2010年 時間警備保障株式会社
どれくらいたってからだろう。
ドラマンは本能的に目を覚ますと、なぜか自分でもわか
らないままドアの横の壁に体をぴったりとつけた。
次の瞬間、 ドアが吹き飛んだ。吸着地雷によるものだ。
サイコ・クラッシャ一が時間警備保障株式会社にのりこんで来たのにちがいない。
ドラマンは敵が抜き身の真っ赤なレイザーソードをかまえてドアをくぐった瞬間、足で
その男の前足をアキレス鰹からすくった。
地面につくスレスレのところで足をすくわれ、男は前のめりに倒れて両刃のレイザーソ
ードで自分の肩を切断した。 ドラマンはもう身を引いている。
次の敵は、とびこんできたのはいいが、最初の男が邪魔で不安定な立ちかたになった。
すかさず、ドラマンはその敵のナイフを持つ手を小手がえしにとると反対の手で頭をっ
かんで壊れたドアにぶち当てた。
これ以上、ここにいるのは、あぶない。そう直感したドラマンは、帽子を左手でにぎって
威嚇射撃をしながら窓からとびだした。
ドラマンは22階の同じ部屋に何かガスのようなものがまかれたのを落−下しながら、確
認しながら、建物より発進した一台のエア・タクシ―が急上昇してくるのに気がついた。
5―3*危機
2010年 エア・タクシ―
エア・タクシ−は、計算したようにドラマンをひろった。エアバックのおばけのような
もののなかにしずみこんだドラマンは、秘書の声を聞いた。
『おはよう けがはない?」
『…なんとか、かな?』
『サイコ・クラッシャーは、スピ一カーから出るメッセージに、ひとの気を狂わせる音を
重ねて、複数の警備員の気を狂わせたらしわ。そうして、救急エア.カーを装って会社に
侵入したにちがいないわ。……ああ、いけないわ。双方がこの戦いで捕虜をっくったにし
ても、がぜんこちらは不利だわ。サイコ・クラッシャーの捕虜は徹底した戦闘員であり、
しかも、捨て石同然にあつかわれても文句も言わない連中ばかりだもの。』
『敵がこの時代に接触した時間はわかるか?』
ドラマンにひとつのアイデアが浮かんだ。
『弾丸の鑑定の結果、2015年とでたわ。本部のコンピューターに命令すればすぐタイ
ムワ一プできるわ。その時代にホームズはいるけどなぜ協力して情報をくれなかったのか
しら。」
『意外と近い未来だな。人類はまだ惑星間に完全にあみをはっていないはずだ。」
『準備できたわ。タイムワープしてもいいかしら。』
『オーケ一』 エア・タクシーが爆音でふるえた。