4章 任務

4−1*銀行

1996年 東京

ドラマンが現れたのは、銀行の窓口だった。老人が座っている。
気がつくと、スーツ2010は、カメレオンのように、洋服に変わってい た。 ドラマンは、あたりを見回す。
いた。NO.59だ。パイプをふかしながらギョロ目で雑誌を読んでい る。
『よう。 59番。ここでの君の役割はなんだね。』と、近付いた時、覆面 をした3人組が入ってきたのに気づいた。
『さすが、時間警察官。でも、ここで、絶対に守らなければならないのは 窓口の老人だ。このことを忘れるなかれ。』NO.59は言った。 自動ドアのそばに一人、部屋の真ん中に一人、老人のいる窓口に一人が立 つと、三人は銃を抜いた。
ドラマンは、『真ん中の奴を頼む。』と言うと、いきなり右手で警帽を投 げた。警帽は、手首のスナップがよく効いて、右にきれいな弧を描いて老人 の真ん前にいる強盗の首を切った。それだけで強盗は気絶した。
ドラマンが、飛び出したのを見て、動こうとする真ん中の強盗にNO.59が飛び掛かり、組み合いになる。 銀行の客が、騒ぎ出す。自動ドアの強盗が天井にむけ威嚇に2発撃つが、 非常ベルを鳴らされてしまい慌てる。 強盗の足を払い組み倒したNO.59が、顔面を撃たれるが、鋼鉄のパ イプで受け止める。
NO.59の特徴のひとつは、鋼鉄のパイプをくわえ ていることであった。
ついに、強盗の手を押さえ付け、頭に頭突きを何度も 打ち込む。
『おぼえてろ。つぎ来る時は組織が相手だ。』と、最後の強盗はドアから 逃げた。すぐパトカーが来る。『俺たちも逃げよう。時間警察官であることは信頼できる者にしか話して はいけないんだ。』
NO.59は言った。 『老人は?』 『後で彼の家に行く。その時、彼に身分を明かそう。』 二人は、窓口を乗り越えると、裏口から抜け出した。

4―2*老人

1996年 東京

夜になって、ドラマンとNO.59はスク一ターに2人乗りして、世田 谷にあるという老人の家に向かった。 NO.59の話によると、この時代には彼以外にもホームズがいるとい う。
彼もこの時代にきたばかりで、わずかな装備しか持っていない。 ドラマンはスク−ターのうしろに乗りながら尋ねた。 『強盗の言ってた組織というのはなんだい?」
『近未来からこの時代にきたサイコ・クラッシャーという組織だ。この時 代に現れ、2010年には人々の脳を恐怖にとりつかせ、世界を破滅させよ うとしている。やつらが、なにを目的としているかはわかっていない。」 『あの老人をなぜ保護してやるんだ。』
『我々の会社からコードネームG7とよばれる女性が、ホームズのひとりに 接触した時、彼女がこの時代初めてのサイコ・クラッシャ一の犠牲者をかか えている事がわかった。その犠牲者があの老人だ。サイコ・クラッシャーは 自ら開発した兵器の実験をするためあの老人の精神を媒体として選んだ。彼 らは、あの老人をまず睡眠不足ぎみにし、現実と夢の境界をあやふやにさせ、 さらに彼が40年勤める銀行に実際に強盗が押入る状況をつくることにより、 彼を半狂乱にさせようとした。しかし、われわれがそれを阻止し、強盗のう ち雇われた2人は警察につかまり、本部の工作員だった1人が捨てぜりふを 残して逃げた。』
NO.59の説明が続く。 『われわれは、組織の出鼻をくじいた訳だが、組織は最初の兵器の論理を 実験で確かめようとしている。また、老人の正気を狂わせにくるだろう。お ーっと!』
目の前にパトカーが止まってた。 NO.59は免許を減点され、2人は、歩いていかなければいけなくな った。 やっと、老人の家についた頃には、深夜になっていた。

4―3*G7という女性

1996年 東京

『どうしてもっと早く来てくれなかったのよう!』
チャイムを鳴らして、出て来たのは23歳くらいの女性であった。彼女は、 NO.59を見てこの言葉をはいたのだが…ははあ、とドラマンは思った。 彼女がG7だろう。だいたいホームズの顔は同じに見える。彼女は、NO.59 を前に会ったホ一ムズと勘違いしたのだ。 『・・・・・・・・・・・・。 』
それから、10分以上もNO.59は彼女に怒られていた。
『おじいちゃんの睡眠リズムは、最近、本当におかしいのよ。病院に行く 前にどうにかしてくれるっていう約束をちゃんとまもってよ。』 『………。』
無言のホ−ムズの代わりにドラマンが話した。
『君のおじいちゃんを助けたい。彼はいまどこにいる?』 どうやら、老人は、昼間強盗に入られたことを彼女に話していないらしか った。ドラマンとNO.59は、老人がいつも行くというファミリーレス トランへ歩いて行った。

4一4*夕食

1996年 東京

老人はデニーズでヒレカツ定食を食べていた。 右手でフォークを持ち、左手でナイフを持っているのだが、ナイフは肉を 一回も切らない。
これには、理由があった。老人は、左利きでも何でもなく、ただ、バラン スをとるために、ナイフを持っていたのだった。 そうして、ときおり肉を右手のフォ一クで食べながら、左手のナイフに自 分の顔をうつして微笑むのであった。彼はここに来るときは、いつもそうし ていた。
彼が、肉を食べ終わろうとしたその時、ナイフにうっった彼の顔が血まみ れになって見えた。 老人は冷や汗をかいて震えだした。睡眠不足と恐怖のため震えがさらに激 しくなった。
その時、ドラマンとNO.59がデニーズに入ってきた。
NO.59 は、老人のナイフを見て『やつらは兵器を改良した!』と叫んだ。
「落ち着いて!われわれはあなたの味方です。』老人を横にして、膝をま げさせるとNO.59が鎮静剤をうった。
すぐウェイトレスが来て『救急車をよびましょうか。』と言った。 『われわれに任せてください。』 
ドラマンはそう言ったが、彼はそのすぐ 後に飛んで壁に叩き付けられた。 窓ガラスに穴が開いていた。 ドラマンは、防弾チョッキの上から、狙撃さ れたのだ。 『大丈夫か。老人を連れだすぞ!』NO.59が筒を開けると、煙りが デニーズにいっぱいになった。

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