3章 相棒

3―1*M.ナカヤマ

2010年 時間警備保障株式会社

『さて、これから、君にいよいよ仕事をあげる訳だけど…』
社長は、秘書をそばに、呼んだ。 『彼女をここへ』 直ぐに、 ドアが割れて、気の強そうな女性が人ってきた。 髪形はショートボブで、白いブラウスに黒のベストと短パンを着ている。
ドラマンは言った。 
『彼女が、パートナ一?』
『違う。彼女はM.ナカヤマ。君のパ―トナ―の母親だ』
『がちょ―ん。説明して下さい』
『彼女は、イギリスのシャ―ロック。ホ―ムズと性行するために雇われた。 ホ−ムズの女性趣味を、分析するところからこのプロジェクトはスタ−トしたのだ。 ホ―ムズの優れた遺伝子が、君のパ―トナーだ。 彼女は、過去のイギリスへいき、歴史上ただひとりのホ―ムズの女となった。 2010年にもどった彼女は、受精卵をコピ―し、1000人の双子をつくり、ありとあ らゆる世界と時代にばらまいたのだ。 彼等は、ナンバ―で呼ばれ、名前を呼ぶときは、”ナンバ―×××・ホ―ムズ”という呼び方 をする。 もし、君が、いった先々の時代で、ホ―ムズがいそうな場所にきたら、彼が、常におかっ ぱで、パイプをくわえてバセド―氏病のような顔をして、パイプの煙りのワッカをポッポ として合図をすることを思い出せ。』 ドラマンは唖然とするだけであった。 社長は続けた。 『ひとつの時代のひとりのホ―ムズは、ある特定の目的をもって行動していることに気を つけたまえ。ホ一ムズのナンバ―は0から999までで、まず君には、”ナンバ−0・ホ一 ムズ”と、1890年のロンドンで会ってもらう。道案内するのは、M.ナカヤマだ。』
『よろしく、中山さん。』
『モモエでいいわ。』
『失礼、ミセス。』
『ミズよ。シャ―ロックとは、一晩会っただけなの。私は、シャ―ロックに、彼の宿敵 モリアティをおとしいれる証拠を手渡されたと思われてるの。ロンドンでは、一緒に楽し めそうね。』 ドラマンは、かつてのドラマンではなかった。彼は、もうぞっとすることはなく、現在自 分のおかれた立場を楽しんでいた。

3―2*NO.0

1890年 ロンドン

ドラマンとモモエは、ベイカ−街にタイムワ―プして現れた。例によって、激しい破裂音 がした。
『NO.0は、テムズ川のほとりに立っているわ。きゃ−! 彼らに見付かったわ!』
モリアティの殺し屋どもが、べイカ―街の北から駆けてくる。4、5人は、いる。
『馬車に、速く、』2人は、南に走る馬車をとめ、 ドラマンが飛び付き、モモエを引き上 げた。 
『そんなムチじゃ駄目だ!俺にかわれ。』 ドラマンは、御者台によじのぼると、日本流の鞭さばきをみせた。 殺し屋どもも、馬車で追ってくる。その馬車は、追跡用で速い。 2キロぐらい逃げたところで、モモエが絶叫した。 『右手のハイド・パークに乗り込んで!』
彼女はベストから、巨大な、ブローチをふたつ取り出した。そして、石を投げるよう−自 分は、窓に箱乗りになって−うしろへそれを投げた。 ブローチの正体は、爆弾だった。殺し屋どもは、きれいに吹き飛び、公園に、巨大なクレ ーターができ、ロンドン市民は”地震かな?”といぶかしんだ事だろう。
『さあ、テムズ川へ!』モモエが歌った。 馬車は、バッキンガム宮殿を横目に走り、セント・ジェイムス・パークをすぎて、国会議 事堂の前にきた。 テムズ川の前に、バーバリのコートを着てサングラスをかけ、煙りをワッカのように出し たパイプをくわえた人物が立っていた。
『NO.0よ。』モモエが言った。

3―3*暗殺者

1890年 ロンドン

NO.0は、言った。 『かあさん、しばらくだね。』
モモエはというと『あんた、一体何人ひとを殺したの?』
『かあさん、随分逢ってないのに、ひどいいいかたするじゃないか。』
『事実だわ。あなたがモーリス・ルブランの作品、 「ハートの7」のバラン兄弟の弟を殺した のことも、 まともではなかったわ。』 NO.0の顔が、よじれた。
 『ファーック、ユー!俺は、モーリス・ルブランを殺した つもりでいた!殺した男が、ルブランでもルパンでもなかったとは!知らなかった!』
NO.0は悔しさのあまり泣いていた。 それにしても、”ファック、ユー”をしってるとは! ドラマンは口をきった。『君のこの時代の目的が暗殺でも、君は、俺の相棒だ。』 『俺の仕事を手伝ってくれるか?』
しばらく間があった。 『俺の手伝えることはこれだ。』NO.0は答え、筒を差し出した。 中には、時間警察官としての証明書とバッジが人っていた。『身分を説明しなくちゃいけ ない時、役にたつだろ。』
モモエが『今から、1996年の日本にタイムワープしてもらうわ。そこで、あなたは ひとりの老人をNO.59・ホームズとまもるのよ。』と肩をたたいてくれた。
ドラマンはタイムワープに入りだしていた。

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