2章 就職

2―1*タイムワープ

2010年 時間警備保障株式会社

万三郎は、ペリ一に撃たれたと思った。しかし、弾丸はどこだろう。
次の瞬間、周囲の様子が変なのに気が付いた。万三郎は、レバーのついた壁のそばにいた。 50cmはある巨大なレバー−を、体にぴったりしたスーツを着た女性が握っているのを 見て、ぞっとする万三郎。
その女性は、すらすらと日本語をしゃべった。
『心配しないで。ここは、時間警備保障株式会社、歴史を最も正しい流れにするために、 世界が協力してつ<りあげた組織よ。あなたは、1854年の日本からきたのね。』
『俺は、安政元年の二月、ペリーを斬ろうとした。』 万三郎は、自分でたしかめるように言った。
『ペリーは、あなたが消えたんでびっくりしてると思うわ。われわれの組織は、あなたが 有能な人材だと見込んで1854年から2010年にタイムワープ、―つまり、連れてき てしまったの。』
万三郎は混乱してしまった。
『良くわからないが…』 『いいのよ。 じき、わかるわ。私の上司を紹介するわ。来て。』秘書は、微笑んだ。 その微笑みは、職務上のものか、愛情表現か、万三郎にはわからなかった。

2―2*社長

2010年 時間警備保障株式会社

社長は小柄でくたびれたYシャツをきたメガネとヒゲの中年男性だった。
『私は、君の行動を見て、君がこの会社にふさわしいと判断した張本人だ。君のアメリカ 全権にたちむかっていった心は、この会社にもっとも必要な尊いものだ。』
『はあ?』と万三郎。
『君には、ここで、有能な時間警察官になるための訓練を積んでもらう。具体的には
1;頭脳訓練
2;戦闘訓練
3;年をとらない訓練の三つだ。』
『!?』
『この会社の全機関を使って天才になれ。私は、君ならできると信じる。天才になるには
1;知能指数を上げること。
2;好きなこと以外やらないこと。
3;六感、七感により見えない世界を意識することだ。』

2―3*覚醒

2010年 時間警備保障株式会社

そうして万三郎は、時間の存在しない部屋の中で、長いこと訓練を続けた。
どのくらい長 い間かわからないほど。 永劫ともおもわれる時のなかから、突然か、社長に呼び出された。 『君は、隠してるけど、調べはついてるんだ。万三郎君、君は、旗本の家出した息子だろ う。』
『そうだ。屋敷では、賛沢をしていた。しかし、剣一筋の艦之助に出会って、生き方とい うものに悩み出した。』
『君を、一人前の時間警察官として認めよう。愛称は、どら息子の万三郎でドラマンだ。 君には、二つ装備を用意した。』 秘書が、服と、帽子を持ってくる。
『体温が自動調節できるス一ツ2010よ。もう一つは銃が内蔵され、カッターのつばの ついた黒い帽子よ。防弾チョッキと重ね着して、わらじのかわりにブーツを履くといいわ。 』
手渡すと、秘書は親指をたてたこぶしをつきだして、ウインクした。 『ありがとう。更衣室に行って来る。』

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